平川 大地
平成22年(2010年)アラビア語学科卒業
9・11以降の衝撃
私が中学生の頃に2001年9•11同時多発テロが発生し、高校生の頃には米英 軍によるイラク侵攻後 の長引く混乱がテレビを賑わせていました。 自爆テロ、抗議デモで叫ぶ人々の姿、モスクの礼拝客、ビラミッドなどの歴史遺産、「アルジャジーラ」の画面に流される不思議な文字…メディアを通じてではありながら、私は「中東」という漠然とした地域とその人々に惹かれ、「あの地域で最も多くの人に使われている言語を学びたい」という思いの下に東外大の門を叩くことにします。
アラブに明け暮れた4年間
不思議なことに、私は東外大へ入学後、何かに取り付かれたか の よう にアラビア語を猛勉強し始めました。文系のサークルにいくつか入ってはいましたが、語学その他の勉強に没頭しつつ、アラブ旅行に向けてバイトをする日々を過ごしました。
初めての学生旅行は2年生の夏で、エジプト、ヨルダン、シリアの3か国を旅しました。中東へ着く以前に、経由地のモスクワ空港で旧ソ連時代の設備とサービスに仰天、カイロでは車のクラクション&無謀運転やしつこい土産物売りなどの喧騒に圧倒され、逆にシリアでは余りの過ごしやすさに感激するなど、筆舌には尽く しがたい程充実した一人旅でした。これを端緒に、その後私は3回の旅行で計7つのアラブ国を訪れることになります。
また、東外大では、留学生の世話役を務めるチューター制度を利用し、多くのアラブ人学生と出会いました。今では日本で通訳会社に勤務している修了生もいます。
大学院に進学するも、不安ぬぐえず
そんな中東好きの自分は、就職活動を前に壁にぶち当たります。「新卒で中東専門の職業に就けるチャンスはほぼ皆無」という実情に直面したのです。 自分は結局どんな仕事をしたいのだろう、今まで中東関係以外のことを深められる時間があったの に、一体何をしてきたのか…。 悩み苦しんだ挙げ句、「専門的な研究を続けたい」という動機で大学院進学を決意しましたが、修了後の厳しい就職難に早くも危機感を抱き始めます。
慶應大学大学院法学研究科政治学専攻では、 東外大入学前からメディアに興味があったこともあり、アラブ諸国におけるマスメディアと政治の関わり合いを研究しました。研究と並行して、大学院入学後から一般的な新卒向けの就職活動も始めました。当初は政府系シンクタンクへの就職を視野にいれていましたが、「事業仕分け」などの行革が断行される中、研究者として定職に就く道はそれまで以上に狭く険しくなっていたからです。
人と会いまくった就活期
就職活動中は、とにかく人に会って話をし、話を聞き、志望同期などをまとめたレジュメや名刺を配りまくりました。インターンにも数多く参加しました。「知能テストなど二の次、人脈と経験こそが肝心」と考えていたからです。
お台場で就職フェアに参加した後、日比谷公園で開かれていた国際協力関連のイベントに顔を出しました。そこで、エジプトでの事業を紹介していたエンジニアリング企業のブースに立ち寄り、人事部長とたまたま名刺交換をしました。彼は、ご自身が主催する勉強会へ私を招待して下さいます。
勉強会当日、会場のJICA 施設で求人広告をぼーっと眺めていると、「中東への渡航経験持つ者を優遇」との掲載が。これらの偶然と偶然が重なり、今ではコンサルティング系企業で中東・北アフリカの安全情報を収集する毎日です。
社会人になって遊びデビュー
私が勤める会社は、コンサルティング事業自体は小規模で、 欠 員が出た時にしか採用を行いません。就活支援サイトに並ぶ大企業とは多くの点で異なります。しかし、小規模な所だからこそ、新入社員の提案が通ったり、大きな仕事を任せてもらえたりします。もちろん、自分から積極的に動くことが不可欠ですが。
今となって心から思うのは、「学生にしかできないことを思う存分、たくさん経験しておけば良かった」ということ。留学や長期旅行、平日に趣味に没頭するなど、社会人になってからは中々出来ないものです。
“遊び”は本当に大切で、特に営業職の場合は仕事に関わることもあります。 無趣味な私は、今更ながら、ミニシアターに通ったり、アウトドアやジムに挑戦したりして、少しでも趣味多き社会人になれるよう頑張っています。
----(略歴)-----
広島市立基町高等学校を卒業後、平成18年(2006年)アラビア語科入学、平成22年(2010年)同卒業。
同年に慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻に入学、平成23年(2011年)に中退後、日本の危機管理コンサルティング会社へ入社。東外大時代は模擬国連やフリーペーパーサークルなどに参加。学生時代にエジプト、ヨルダン、シリア、カタール、UAE、イエメン、レバノン、オマーンへ渡航。現在は、暴れ狂う中東・北アフリカの情勢分析に追われる傍ら、東京外語会「平成の会」スタッフを務める。(2012年5月現在)
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本人への連絡を希望される学生、同窓生の方は、東京外語会平成の会([email protected])宛にお問い合わせ下さい。
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